組織活動を行うに当たり必要な情報やノウハウなどの知識が,組織には大量に存在しています.しかしそれらの情報は各個人それぞれが保持しており,活かしきれていません.近年,ナレッジマネージメントという研究分野で組織における知識を如何に効率良く共有するかが企業などでも活発に研究されています. 本研究で開発を行っているPapitsでは,各個人が持つネットワークに接続された計算機に含まれるファイルを利用し,各個人が持つ情報や知識の共有を促進させることを目指して,そのために必要な情報検索や情報推薦の技術の開発を行っています. |
知識共有支援システムPapitsは,研究活動支援のために,組織における情報や知識の共有を促進することを目指し,本研究室で開発されているシステムである.研究ではさまざまな情報が必要であり,それらの情報は主に計算機上のさまざまなファイルとして残されている.研究に利用できる時間は限られており,情報収集はできるだけ効率よく行うことが望まれる.研究室では,皆がある特定の方向の類似した研究を行うことが多い.そのため,収集するべき情報の種類も類似しており,ある人が探そうとしている情報はすでに別の人が見つけている可能性もある.重複した作業は時間の無駄であり,情報を共有することにより,そのような無駄を省くことができ,たいへん有意義なことである.この問題に対し,NFSやAppleShareのようなファイル共有機能を利用した情報の共有という解決方法がある.しかし,ファイルの形式やファイル名など,情報の保存方式の規範は人によって異なる.分散情報検索と同じように,異種で分散した情報源の中から適切な情報を見つけることは難しい.Papitsでは組織内での情報共有のインセンティブを高め,情報共有を促進させると共に,組織内の情報以外にも,WWWのような他の情報源も透過的に扱うことができるように設計されており,外部内部含めて,ユーザが必要とする情報を効率良く見つけることができるシステムを開発中である.
PapitsではMacintoshのSherlockとWeb共有機能を利用して組織内での情報共有環境を構築する.ユーザは共有用のフォルダを用意し,そこに個人の規範に基づいてファイルを整理してもらう.共有するファイルには,作業ファイルや,これまでに読んだ論文ファイル,自分が書いた論文ファイルや発表用OHPファイルなど,研究に関連する情報全般である.SherlockをAppleScriptから制御することにより,そのフォルダ内のファイルについて全文検索機能(find by contents)を利用して検索をすることができる.検索についてはWeb共有機能を利用してCGI経由でリモートの計算機から実行することができ,ファイルのダウンロードも可能である.Papitsでは共有対象となったファイルに関する情報を収集し,Papits内で整理したり,ユーザの興味などをモデル化する.ユーザはPapitsを介して必要な情報を探す.Papitsではユーザが望んだ情報に関連した情報を同時に提示したり,ユーザのモデルに基づいてユーザの嗜好にあった情報を推薦してくれる.推薦の仕組みはユーザの共有情報を元に行われるため,推薦のようなプッシュ型の情報提示機能を組み込むことにより,共有のインセンティブを向上させることができる.PapitsではWWWからの情報収集機構を備えており,組織内の情報以外にも外部の情報源から自動的に情報を収集する.これらの情報はPapitsインタフェースにおいて透過に扱われるので,ユーザからは組織内での情報を探すのと同じようにWWW上の情報を得ることができる.
Papitsを開発するにあたり,さまざまな技術が必要となる.本研究室ではPapitsの開発をとおしてそれら要素技術の開発を行っている.