研究プロジェクト
  WisdomWeb
Argent
H203
iDSS
実装プロジェクト
  MiDoc
Web Page Stickies
Web Page Marker
  Wisdom Web
  メンバ 伊藤孝行,西健太郎,平岡佑介,山谷孝史,深萱裕二郎
  キーワード インセンティブ,知識表現,P2P,Writable Web,ナレッジマーケット
  目的 Wisdom Webの実現:インセンティブに基づく知恵の共有システムの開発
  研究概要

本プロジェクトでは,インセンティブに基づく知識共有システムの構築を通して, WWWやSemantic Webを凌駕し知恵を共有するWisdom Webを実現することを目指す.
現在,World Wide Web(WWW)は,最も広く世界で利用されている情報共有システムの一つである. HTMLによる表現形式の統一化, XMLを用いたSemantic Webによる文書の意味の共有が可能となった.しかし,WWWでもSemantic Webでも,情報を提供するにはコストがかかるため,なんらかのインセンティブがなければ,情報の提供は促進されない. WWWにおける表現形式や意味付けの方法がいくら高度に洗練されていても,情報を提供することの負担が大きければ,質の良い情報の共有は期待できない.
そこで本プロジェクトでは,ユーザに情報を提供するインセンティブを与えることによって,質の良い情報の提供を促進する.ここでは報酬ではなく,具体的なサービスを提供することによってユーザに情報を提供するインセンティブを与える.ユーザのインセンティブとなり得るサービスは,ユーザの好み,立場,状況等によって変化する.本プロジェクトでは,ユーザの行動履歴に基づいて具体的なサービスを特定し,ユーザに提示する仕組みを構築する.本プロジェクトでは,情報や知識に加えて計算や推論を行うメカニズムを持つ実体を,知恵(Wisdom)と呼ぶ.サービスは知恵の具体例である.

【インセンティブ】
一般に,情報共有システムにおいて,ユーザが情報を提供するコストは大きい.そこで,本研究では,ユーザに何らかのインセンティブを与えることによって,情報の提供を促進させるシステムを構築している.本研究の目的は,共有する情報の種類や質によって,何がインセンティブになるかを発見し,そのインセンティブに基づいた情報共有システムを開発することである.例えば,グループにおける研究支援システムを考える.自分が読んだ論文に関する情報を共有するために,システムに情報を登録する作業は面倒であり,情報共有の妨げとなる.しかし,仮に登録作業自体に情報共有に対するインセンティブがあれば,人は自ら喜んで情報を登録すると考えられる.登録作業によって発生するインセンティブの例として,情報推薦が挙げられる.登録作業による推薦精度の向上は,登録作業をするインセンティブとなる可能性がある.このようなインセンティブの種になるようなサービスを分析することで,その様なサービスの実現に必要な属性を明らかにする.

【知識表現】
各ユーザは,異なるインセンティブを持っていると考えられるため,個々に違ったインセンティブを表現する必要がある.インセンティブは知識表現言語KRML(Knowledge Representation Markup Language)を用いて表現されている.KRMLは,XMLに基づいてセマンティックネット,フレーム,ルールなどの知識表現を目指した知識表現言語である.特徴としては,フレームにおけるデモンのような付加手続きを記述できる点がある.本特徴により,ページ自体に,知識ベース(知的コンテンツ)と推論エンジン(処理系)を備えた新しいWebネットワークを構築する事ができる.KRMLを用いることによって,情報共有システムが異なる設計者によって設計された場合でも,ユーザのインセンティブの交換・比較が可能になる.

【P2Pアプリケーション】
Wisdom Webの具体的なアプリケーションとして,ドキュメント共有システムMiDocを開発する.一般に,研究室などの小グループでは,類似した研究を行うことが多く,必要とする情報も類似している.そのため,あるユーザが必要とする情報は,別のユーザが持っている可能性がある.MiDocによる効果的な情報共有により, Webなどから新たな情報を探すといったコストやリスクを解消することができる. MiDocはP2Pに基づくネットワークを形成し,ファイアーウォールを越えたドキュメント共有を行う.これにより,自宅からでも,オフィスのLAN内部で共有するドキュメントにアクセスでき,様々なシーンに応用することが可能である.

【Writable Web】
表現や意味付け行うタグ付けは,一般的にコストが高い作業であることから,ユーザの情報発信の妨げとなっている.そこで,本プロジェクトでは,初心者でも直感的かつ直接的にWebページを編集できる機構を実現する.いかにして,直感的かつ直接的にWebページを編集できる機構を実現するかであるが, JavaScriptとCGIを用いることによって,タグを1行加えれば,任意のWebブラウザから,直接Webページを編集することが可能である技術を開発した.さらに,HTMLのフレーム記述を利用して,あらたなタグなしでもWebページを編集することができるような仕組みを構築中である.

【ナレッジマーケット】
本プロジェクトでは,情報,知識および知恵を共有することを目的とするが,競争原理を導入することによって,質の高い情報,知識,および知恵を共有することを目指す.情報,知識,および知恵を,単に協力的に提供し合っても,質の高い情報,知識,および知恵を集めることができるとは限らない.そこで,本プロジェクトでは,市場メカニズムとしてのオークションを導入することによって,競争的に情報,知識,および知恵を提供しあうような仕組みを構築する.具体例としてTIPS(ノウハウや裏技)を共有するシステムにおいて,どのような市場が実現できるかを検討し実現する.


新谷研究室 2004